【事件激情】ネバダたん─“史上最も可愛い殺人者”(1)佐世保小6同級生殺人事件

noriaky1112010-03-22

Chapter1 2004年6月1日 昼12時40分


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いま手元に一枚の写真がある。

子どもたちの集合写真。
そのなかに2人の少女が肩を並べている。1人はまるっこい顔に大らかな笑みを浮かべている。その隣の子はやや緊張気味で、体型を気にしてるんだろうか、だぶだぶのパーカーとにチノパン。
その胸にはこんな文字がプリントされている。

NEVADA

この写真から少女はネバダたん」とネット上で呼ばれるように*1なった。
佐世保小6女児同級生殺人事件の殺人者として。



■「わたしの血じゃない!」


2004年つまり平成16年。この年も例によって目まぐるしくいろいろな出来事があった。アテネ五輪、G子ジャパンが優勝した北京アジア杯、「自己責任」なるささくれた言葉を生んだイラク人質事件プロ野球初のストライキ。そういえば窪塚洋介もビルからダイブした。陰惨な事件も起きた。兵庫県で親族7人を45分で虐殺した事件ですさんだ。そんな年。ちなみにワ士はそれらが同じ年だったことすら忘れていた。

そんな慌ただしき年の6月1日長崎県佐世保

その小学校は全校児童190人程度の小規模学校で、1学年1クラスずつしかなく、6年も38人だけで6年1組しかない。

12時35分。そんな6年教室では、給食の「いただきます」になっても、2人の女子の姿がないままだった。12時40分頃になって、2人がいないな、などと担任(男)が言っていると、やっと当の女子のうち1人が前の入口に現われた。

彼女は目鼻立ちの整った美少女だった。同級生も「きれいだね」と見ほれるほどの。でもそのきれいな目がそのときはなんだかおかしくて、遠くを見ているようだった。
彼女がよく履いている裾を引きずるくらいだぶだぶのボトム。これもなんだか変だった。午前中は青色のはずだったのに、なぜか今は黒ずんでっぽい。手に持ったタオルについてる赤いのは血? それになんでカッターナイフまで持ってる? 学校に持ち込み禁止のはずじゃないか。
担任が慌てて「どこか切ったのか?」と聞くと、
彼女は急に泣きそうな顔になった。
「違うちがう! 私の血じゃない!」
担任は思わず、ミタちゃんはどこだ、と肩を揺すって声を荒げた。2人は仲のいい友だちだから、きっと一緒にいたはずだ。
「あっち」と彼女は虚ろな顔のまま学習ルームの方を見た。でもなぜか担任は彼女を廊下に残したまま扉を閉めると、自分の机に戻り、お茶を飲み出した(何をしてるのか先生…)。
すぐに彼女が戸を開けて、「早く救急車を呼んで!」と急かした。ああ──やっと担任は我に返って、学習ルームへと向かった。


「児童が怪我をして血が出ている」と通報を受けて学校に駆けつけた救急隊員はショックを受けまたいらついていた。現場の学習ルームはひどい惨状だ。“血が出ている”なんてもんじゃない。可哀想だがあの子はもはや手の施しようがない。一体誰があんな酷いことを。変質者でも学校に入り込んだのか。

にしても先生の誰一人として事情を説明できないとはどういうことだ。どの先生も慌てふためいて度を失うばかり。いい大人が何大勢いて誰も何も知らないとは。それにこの哀れな女の子がこんなひどいありさになっているっていうのに、なんで誰もそばにいてやらないんだ。なんで独りぼっちのまま放っておくんだ。えらく薄情じゃないか。

発見者の6年担任に訊こうとしてもすすり泣いてばかり。何を泣いてるんだ。子どもたちも大勢いるんだし、先生のあんたがしっかりしなきゃいけないだろうが。誰か事情を話せる人間はいないのか!と救急隊員が怒っているところに、女教師が「この子が知っています」と、小柄できれいな顔の少女を連れてきた。
なにがあったの、そこにいたんだね、君、と救急隊員が訊くと、少女は虚ろな目のまま、静かに答えた。

「わたしがやりました。カッターで首を切りました」
「は……?」救急隊員も女教師も言葉を失った。
「お願い、ミタちゃんを助けてあげて」



*なぜ“普通の少女”が、あんなことを?


ネット上で“犯罪史上最も可愛い殺人者”と呼ばれることとなったネバダたん」。小学生同士が学校内で初めて起こした殺人。

ネットでの希薄なコミュニケーションが…、テレビやゲームの暴力が…、今どきの子どもは…とさんざ騒がれ、「さぞ異常な子に違いない、異常のはずだ」と決めつけられた。

だがその後の発表では「ごく普通の子」だという。

普通の子?

普通の小学生ならなぜあそこまでする? なぜ殺したのか、一番の友だちを? ネットのやりすぎが原因だろう? それとも少年犯罪凶悪化の前触れなのか?

が、この事件、酒鬼薔薇聖斗とはちがい、犯行後すぐに犯人自ら告白し、しかも刑事捜査のできる下限より下の11歳だったこともあって、すこぶるまともな情報が少ない。噂やデマはあふれるほどいっぱいあるが。

あららら当日のことを書いただけででえらく長くなってしまった。

こりゃ一回や二回で済ませたら罰が当たるマジで、と思った。だからできる限りきっちり書こう。


仲良しだった2人なのに、なんでこんな悲劇になってしまったのか。5月27日から事件当日までの“運命の6日間”に何が起きていたのか。ワ士がいろいろ漁って分かってきたのは、なんだか意外で、恐ろしいがとても悲しくなる“真相”だったんである……。


【続く】 >> (2)

▽参考文献

*1:もちろんネット上の噂で事実と確認されてはいないが、出回っているさまざまな画像のなかでは「本物」と見なされている