県警対14歳 Vol.2【酒鬼薔薇聖斗事件】


  
現実の魔物は、
本当に普通な“彼”の兄弟や両親たち以上に普通に見えるし、
実際、そのように振る舞う。
──“少年A”による「懲役13年」より
  
  

 
1997年 5月24日
土曜日
  
──1日目
  

この日、週末の須磨ニュータウンは、朝から雨が降ったり止んだり天気は不安定である。
  
その夜8時50分
神戸市須磨区を管轄する須磨警察署に、ニュータウン友が丘の住民から捜索願が出された。
  
「11歳の次男が出かけたまま帰ってこない」
  

時間を逆回転してさかのぼると──


午後1時30分から40分頃──
  
いなくなったのは、友が丘に住む土師淳@11歳
多井畑小学校6年生。
  
家族そろって昼食のあと、

「じいちゃんとこ行ってくるわ」
一人で家を出た。
  
母親は出かけに声をかけた。

「ジャンパー着て行きなさい」
  

“じいちゃんとこ”までは市道を東へ500mほど。ご近所さん的距離だから、はふらりとよく遊びに行くのだった。
  
学校では“なかよし学級”にはやや知的発達障害がある。
でも生活に支障があるってほどじゃなく、

いつもニコニコ丸い笑顔を振りまく一方で、知らないおじさんどころか知ってる大人にさえ近づかない用心深い子で、必ず暗くなる夕方5時には帰ってくる子だった。
  
少し前に、北隣の学区で通り魔が出て、

女の子大けがをしたか死んでしまったかした事件があって集団登下校も続いていたからなんだか最近物騒で怖いわねだったけれど、
まあじいちゃんの家なら近くだし、表通りだし、家族もそんなに心配してなかった。
  
ところが、


5時半を過ぎても、
  
少年は帰らない。
  
珍しいわね、どうしたのかな。

母親じいちゃん祖父の家に電話してみた。
  
  
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