乙女の祈り。:中篇【宝塚中3女子自宅放火事件】
乙女のソウルメイト
さて、ここでとつぜん宝塚に戻る、
グローリー、グローリー、グローリー
タ・カ・ラ・ヅ・カ、グローリー!
こっちでも乙女の友情物語が始まってます。
ジュリ江はですな、日本人ですな念為。
でも家庭環境がかなり似てたのが、ジュリ江をポー子に接近させたんである。
ジュリ江が中学に入る前に両親が離婚、母親に育てられてたけども、まもなくジュリ母が再婚。姓が変わる。新しい父親。
事件当時は↓こんな家族状態
◆ジュリ継父 @36歳 再婚 ◆ジュリ母 @36歳
■兄 @16歳 ■ジュリ江 @14歳 ■弟 @12歳
ジュリ江、成績=中くらい。
1年ではポー子と同じバレー部、
2年からは吹奏楽部。
ごく大人しい平凡で目立たない生徒だった。が、
新しい父親と「気持ち的にうまくいかへん」
ただでさえ女の子でしかもお多感な年頃だし女子中学生は原則父親は嫌いだからね。なのにいきなり知らんおっさんを今日からこの人パパだからと言われても「気持ち的にうまくいかへん」のは当たり前で。
そのへんのイライラを反映して服とか派手になってきた。
が、こちらのジュリ継父も「子育て=叱る」「しつけ=怒鳴る殴る」と思ってるバイオレンスおとんだったらしい。
そんなおとんばっかりかよ(-д-;)
そんなのもあってポー子に自分と共通な“匂い”を感じたんだろう。クラスで浮いてたポー子に声かけて仲良くなる。ジュリ江はポー子のつらい学校生活の支えになった
だけなら、
花咲く乙女の麗しい友情物語で終わったんだけども…。
中1の冬、
ポー子の家庭の異様さを物語る事件が起きた。
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*乙女の祈り 1994年 監督/ピーター・ジャクソン 出演/メラニー・リンスキー、ケイト・ウィンスレット
*緊急報告 宝塚自宅放火事件「二人の予兆」/神戸新聞
*【宝塚女子中学生放火・殺人未遂】/産経ニュース
乙女の祈り。:前篇【宝塚中3女子自宅放火事件】
アカデミー賞女優の隠したい乙女時代
走る走る、
2人の乙女走る。
のどかな田舎の小道を、
走る走る。
でも、顔にも、服にも、
手にも、足にも、
返り血がたっぷりついて。
2人の乙女は血まみれで、
走る走る。
「大変、大変よおおお!」
「ママが!ママが崖から落ちたの!」
「血まみれよおお!どうしよおお!」
っていうのが、
映画「乙女の祈り」のオープニング。
1954年、ニュージーランド第2の都市クライストチャーチで起きた殺人事件の映画化だ。
ってなんでまた南半球のどっかの街の事件をたらたら書いてるかというと、
この「乙女の祈り」が、つうかそのモデルになったクライストチャーチ事件、あまりにも構図と底流に流れるマグマが似てるんである。
2010年の日本国兵庫県宝塚市、
21世紀極東の島国に生きる、もうひと組の乙女2人、
在日ブラジル人少女と日本人少女の起こした事件と。
【つづきを読む】
*乙女の祈り 1994年 監督/ピーター・ジャクソン 出演/メラニー・リンスキー、ケイト・ウィンスレット
*緊急報告 宝塚自宅放火事件「二人の予兆」/神戸新聞
*【宝塚女子中学生放火・殺人未遂】/産経ニュース
【戦国駄男衆激情】勝負せずして帰る男【朝倉義景】
名将勇将智将名臣の影にかすむ、愚将凡将痴将鈍臣たち。彼らはなんで駄目だったのか? どこで間違えたのか? ビジネスシーンにも…使えん、戦国のヘタレで愛すべき駄男衆(だめんず)が哀歌。
名前■あさくらよしかげ
性質■すぐ帰る
生没■天文2(1533)年─天正元(1573)年
出自■越前守護 朝倉11代当主(最後の当主)
支配地■越前・若狭 居城■越前一乗谷
敵■織田信長、徳川家康
味方■浅井長政、武田信玄、本願寺、延暦寺、足利義昭
ホントは“だめんず”だからしてもうちっと小物をフィーチャーしたいんだが、やっぱり時節柄も亡国流行りだしヨッシーで。
しゃて、
ここに浅井長政という武将がいてですな。
ごぞんじのとおり戦国一の美人妻お市の方@信長妹
の夫で、
淀どのやら江@2011年大河ドラマ絶賛予定中やらのお父さんにして悲劇の武将にして歴史系でも定番の哀戦士。レキジョを増殖させた例のゲームでもイケメン扱いで。
んーとイケメン以前に聖闘士星矢みたいだが、たぶん大河ドラマでもそれはそれはキメキメで出てくるだろう。ほほートキ ニンザブロウがやるんだ長政。
が、
じゃ任三郎の相方は誰よ?というと、好き者以外で知ってる人はぐんと減る。いや相方がいたことすら知らんかったり。
かろうじて「朝倉」の名は出ても、最後どうなったか知ってる人はこれまた激減。
きっと今度の大河ドラマでも顔が出てセリフがあったら御の字だろう朝倉。福井県民やや不機嫌。
というくらい悲劇的に影の薄い左衛門督義景公であるけども。
この朝倉家は、戦国大名第1号といわれてる。自分の主人を追い出して越前守護になって下克上、社是いや家訓として「門閥否定」「実力主義」を標榜したいわばパイオニアなんである。
百年王国の首都・一乗谷
その越前朝倉家が武も文も工も豊かに発展して、百年王国になろうって頃、当主になったのが義景@弱冠15歳。
のちに後世まで使えねえ呼ばわりされる勃たずの人生が始まる。
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彼女Y.Mの福音 :後編【池袋出会いカフェ殺人事件】
大学デビュー
都内の有名私立大学4年生。いかにも大学全入時代っぽい学部に在籍。
いつから、なぜ、彼女が「割切り」までするようになったのかはわからない。
意外にも、
愛くるしい、純真、清純、純粋、
なんて古代語の域に入る言葉がとても似合う少女的な少女。10代な眼差しにまだギャルの兆しはない。
てことは、ギャル系JKがいちおう大学にスライドして、ギャル系女子大生やってたわけでなくて、いまや珍しい響きの大学デビューだったんじゃないかと思うけれども。
卒アルから4年、ギャル系女子大生となって出会いカフェを根城に夜な夜な体を売るようにまでに、その脳内で何があったんだろうか。もはや知ることもかなわんのである。
「ヘアメイクの仕事をしたい」彼女は友だちに将来の夢を語ってた。
どこまで本気だったのかただポーズぽく言ってただけなのか。
大学4年でこのご時世そろそろ内定も決まってないとややまずめなんでないのなんだが、
夜の諭吉収集と並行してリクスーに身を固めて「御社の自由闊達な社風キリッ」なんていや今どきそんなこという奴おらんないやいるか、とにかくそんなことやれてたかどうか…。
あの↓ 完全無欠スーパー女子大生マイキー →
とは、まるで別次元の生きもの、
逆にいうとそのへんにゴマンといる今どき女子大生。
そのへんにゴマンといる女子大生が割切りを割り切ってるかどうかはともかくとして、彼女がその平均像からそんなにかけ離れてる変な女ってわけでもない。
彼女の死にざまとその昼の顔から、
東電OL →
をちらと思い出す人もいただろう、いただろうけども、
円山町の安アパートの空き部屋で死んだ東電OLのドス黒い背徳と堕落衝動は、池袋の彼女にはまっっったくない。
彼女は東電OLのようにウィッグと白塗りメイクで娼婦モードに変身する必要さえなかった。
もっと自然体、屈託なく、ふだんの延長線上、罪悪感なんて超薄いっす。
さすがにキャンパスで、
「みんなあああ、聞いてええええ」
「わたしいいい、ウリやってんのよおお!(しかも大声)」
なんてことしなかったし、もちろん親にも内緒だっただろうけど、出会いカフェ通いは、仲のいい友だちなら知っていた。
ただ彼女が底抜けのお人好しでない限り、たぶん割切り仕事までは教えてない。だってねえ、ほらたとえ友だちでも同性に弱点を握られたらどんなことが起きるか油断できないし(*´・ω・)(・ω・`*)ネー
「学費の足しに」と彼女は友だちに言ってたけれど、本当にそうか遊んだりオサレに使う金が足りなかったのか。とにかく彼女はいろんなバイトを掛け持ち、出会いカフェも“割のいいバイト”のひとつだった。
平成生まれ第1世代の彼女たち。物心ついたときからずっと不況。
「バブル」なんて江戸時代とかわらん「歴史」だしてか江戸時代っていつだっけ?明治より後ってコトは知ってるんだけどあれ?戦争より後だっけ?あれ戦争ってイラン戦争だよね?
ふつうに真面目に働いててもぜんぜんお金にならないし、てかふつうに真面目に働くチャンスすら異常に少ないし、なんだかこの先の人生ずっとそうなりそうだし、夢とか目標持つだけムダじゃね?
'85テレクラ>'90ブルセラ>'94ダイヤルQ2>'96 Enjo kosai>'99ケータイ出会い系>'04 SNS>'06セリクラ>'06出会いカフェ←今ここ。
“先輩たち”がせっせと土壌を耕してきたおかげで、彼女たちにとっちゃ性的自分を換金することも、売春へのハードルも前の世代が思ってる以上にごくごくごく低い。
彼女を出会いカフェで見かけたという常連女も、紀尾井町あたりにある某カトリック系大学の学生(自称だけど)だった。
(※ところで、被害者をその某カトリック会系大学の学生と言い切ってる掲示板やブログがやたら多いんで、なんでなのよ?と思ったけれども、単にニュース記事を読み間違えてゴッチャにしてるウッカリさんたちであった。他の割切りの子たちはどうか知らんけど、少なくとも死んだ彼女はその某大学の学生じゃない)
さて、出会いカフェの女フロア内でも、彼女は“人気No.1”状態。
事件直前の25日土曜の夜も同じ。すぐ指名されて、すぐ連れ出された。
まあ出会いカフェ側のスタッフにとっては、店から出たあと2人がどこで何しようと関係ないし興味もないっつうことで。
毎度ありあしたぁ、またのお越しをおまていあーす、である。
* 美人時計アダルト
その頃、日付は26日 日曜に変わっていた。
彼女の人生は、あと3時間ほどしか残ってない。
■
ていう彼女の氏素性も死ぬ直前の足取りも捜査が始まったときには当然ながらまるで分かってなかったわけで、捜査難航&長期化すると思われた池袋ホテル“不詳女性”変死事件。
ところが、1日も経たないうちに、思わぬ急転直下で解決する。
26日も日暮れて。渋谷署。のりピー事件ですっかりこの建物も有名になったんだが。
ここに2人の男がやってきた。
【つづきを読む】
彼女の福音 : 前編【池袋出会いカフェ殺人事件】
「現場、池袋1丁目。被害者、35歳くらいの女」
そのちっぽけなピンクのラブホテルは、池袋東口から出て明治通りを北東へ、移転も間近な豊島区役所の向かいのブロックにある。
昭和系やらアート系やらなぜか落語までやってる映画館新文芸坐、ボーリング場の看板をかかげてレトロというより単に古い雑居ビルD-BOX、ストリップヌード専門館ミカド劇場。
再開発もまだまだ遠く、年季の入った2階3階建てのビルや商店がひしめく。
パチンコ、ヘルス、いかにもそちゃら向けの狭い汚いラブホ、テレクラ、個室ビデオ、まあそんなのが迷路みたいな路地にグチャグチャ現れ、その数だけネオンがぎらっぎら、
とまあ昭和仕込みの脂っこい香り、というか臭いがよどんでる、場末ええな奥の奥までもう奥の一角に。
そのラブホだが、なんとかアーバンな感じにしようと企業努力した結果よけいに場末感が倍増なんだけども。
もともとこの建物では池袋でも1、2を争う人気の風俗店が営業してたんだが、10年くらい前につぶれて、いろいろあって今のピンクのラブホになったんである。
元風俗店の物件だからぜんぜん宿泊向きじゃないわけでとにかく狭い。
小さいのに13室も客室にしたからベッド1個で部屋はいっぱい、ベッドなのか部屋なのかわからんくらいで情緒もムードも(なつかしい響き)へったくれもない。
そんなんだからここに来る客がどんなジャンルなのか想像もつくってもん。
さてこの日、
2010年 9月26日 日曜日
午前4時過ぎ。夜明けまであと1時間半。
フロント係がおかしいなと思い始めている。
そろそろチェックアウトするはずの2階の客。ちっとも降りてこない。
その男女2人は深夜2時にやって来て、
90分の予定でチェックインしていた。
なにしに来てどんな組み合わせかは考えるまでもなし。ここはほぼ100パーそのためのホテルなんだから。
途中、男の声で
「延長お願いします」
のコールがあった。でも延長分の30分も過ぎた。なのに降りてこない。
部屋に何度か電話した。出ねえ。寝てるのか。
まあフロント係が電話しただけで放っておいたのは、こういうこともよくあるわけで。
たとえば浴室で(;゚∀゚)(;゚∀゚)(;゚∀゚)とか。
そんな真っ最中にドア叩いて逆ギレされてもめんどくさいしどうせこっちが悪者にされてアホらしいし。
が、
夜も明けて、
正午も過ぎた。2階の客、いまだ音沙汰ナシ。
さすがにヘンだぞ。やっとラブホテルマンたちは2階へ向かい。
合い鍵で客室のドアを開けた。
あれ、男はどこだ、トイレか?
「えーと、お客さま、お客さま」
おずおず声をかけて、女を揺すぶって──
豊島署の署員が駆けつけた。
続いて警視庁捜査1課の腕利きたちも鑑識課員も。
ベッドの女、死んでいた。
「30代も半ば」と刑事は思った。ほかの捜査員もそう思った。
部屋に入るときは履いてたはずだ。それがない。
厄介なことに身元がわかる物も持ってなかった。というかバッグや財布すら見当たらない。一緒にいた男が持ち去ったかもしれない。
痴情のもつれで男に殺されたか?
それとも商売女が客(やはり男だが)に殺されたか?
警察の見立ては半分だけ当たっていた。
彼女は痴情のもつれじゃなく、売春の客に殺された。
まだ22歳で、
有名私大に通う女子大生だった。
「出会いカフェ」「素人売春」「池袋アンダーワールド」が背景に暗く鬱々と横たわるこの殺人事件、
これまで【事件激情】に登場してきた異形のメジャー級にくらべて、一瞬で消費され、早くも忘れ去られつつある、事件的によくある事件。
でも一見ありふれたこの事件、じつは事件激情的に底が深いんである、いやというか浅い、いやむしろ浅いからこそ底なしに深く──。
【つづきを読む】
その男、K。#12(終)【秋葉原通り魔事件】
<contents
6月8日の事件関係者リスト> そのほかの事件関係者リスト>
親たち
東京──
病院に駆けつけたタカの親父は、息子の遺体と対面して叫んだ。
「バカ野郎!なぜ死んだ!」
青森──
夜7時。加藤智大の実家にマスコミが群がる。
すでに離婚、家に住んでるのは父親だけだったが、両親そろって玄関前で頭を下げた。
母親は腰が抜けて立てず、這いつくばって屋内に消えた。
鎮魂歌
事件から数日後──
死者7人の葬儀があった。
なかでも異彩を放ったのが彼女の通夜、告別式。
会場は、寛永寺輪王殿、
雨の中、参列者は3時間の列。
そして宗教色を排した音楽葬。
先輩@彼氏や親しかった5人の藝大生の演奏、「ヘイ・ジュード」「G線上のアリア」、彼女の好きな曲で弔った。
社葬や著名人の葬儀場格の輪王殿、東京藝大の学長臨席、日比谷高校の校長も参列、三笠宮崇仁親王(客員名誉教授だからだが)の弔電、政府関連や大企業からも弔電(父親といとこおじラインで)、
21歳の一女子大生には破格の大葬になった。
マスコミは“視聴者ウケ”する彼女の悲劇ばかり追った。もちろん音楽葬も。
これがあるニッチな集団を刺激した。
「加藤智大は神」「格差社会の英雄」「加藤の乱」「勝ち組に一矢報いた」「我々のスケープゴートとなった聖人」
ネット上の“負け組なおれら”だ。
【続きを読む】
その男、K。#11-凶刃【秋葉原通り魔事件】
< #10「みんなさようなら」
「12時35分 逮捕」更新
6月8日の事件関係者リスト>
「あの時、いた人は何が起きているのか分からないまま、
意識がなくなり、それでおしまい。
分からないまま死んでいきました」
──公判での被害者女性の言葉
秋葉原周辺MAP
12時33分 突入
▽
▼12:30 27
▽
◆元歯医者さんスギナミ父子
買うデジカメ候補を大体決めたスギナミ@元歯医者さんと息子@医者は先に腹ごしらえしに行こうと外に出たところ。
大学生4人組が「空の境界」の話やセリフを言ってみたりワイワイしてる近くにスギナミ父子は立った。
「うまいものが食べたいな」とスギナミ。
■K
怖じけて3度も交差点を素通りしてしまった加藤智大ことKは、
(今度こそやる)
本郷通りの神田明神下交差点を直進、
神田明神通りに入った。
脇道から白い車が出てきて前に割り込まれた。しかたなく減速。問題ない。直前に追い抜けばいいし。
◆静岡っ娘ヤイヅ
ヤイヅと男友だちも、交差点で信号待ち。
あ、青になった。
◆タクシードライバー
秋葉原駅で客を降ろすと、駅前からUDXとダイビルの聳える間を抜け、ソフマップのある三丁目交差点へ。
信号は赤。西を向いてタクシーは停まった。
歩行者天国始まってるな、人でいっぱいだ。
誰か乗りたそうな顔はいないかキョロキョロ。タクシーの習性だ。
そのとき、南側のホコ天から交差点にのろのろ出てくる紺色のワゴン車が目に入った。
おいおい、何やってんだ、あのワゴン。
◆メージャー氏
青になった交差点を渡り、人の行き来する中、紺色のワゴン車が交差点南口で立ち往生してる横を通りすぎた。
ああ、ホコ天が始まる前に出られなかったんだな。
◆
結果として、このドジなワゴンが、さらに多く失われたかもしれない人命を救った。
▽
▼12:33 08
▽
■K
見えてきた。
三丁目交差点の信号は赤。
人が大勢渡ってる。
Kはそのままアクセルを踏む。右折してホコ天に突っ──
停まってる。突入するつもりのホコ天南口をもろふさいで。
なんで邪魔するっ。
◆大学生4人組
ノリとヒロがなんとなく前を、カズとタカは後ろになって歩いた。
後ろのカズが不意に、「おれの下の名前、分かる?」とノリに訊いた。
いつも苗字で呼んでたけど、そういやカズの名前、漢字なんて読むんだろ。りん?ゆ?ノリは歩きながら考えた。
■K
直進だ。作戦変更だ。
アクセルを思い切り踏み込んだ。
急ハンドルを切って対向車線に大きくはみ出し、前の白い車を追い抜いた。
エンジンがゴオッと吼えた。時速40キロ。
◆タクシードライバー
「なんてへたくそなんだ」
西から来る2トントラックが大きくたわむように前の白い車を追い抜くのを見て思った。
スピード出すぎじゃないのか、まだ信号赤な──
◆マイキー
ソフマップ店頭でソフトバンク販促イベント中。
耳障りなエンジン音に目を向けると、物凄い勢いで近づくトラックが見えて──
◆コウベパパ
コウベママと娘と一緒に、交差点を横断中。
おや、あのトラック、スピード落ちないな。
というか、加速した!?
2トントラックは信号待ちの車も追い越し──
スギナミ息子@医者はゴオッという轟音を聞き、数メートルまでトラックが迫ってるのを見た、危ない、と思う間もなく──
ノリはどんっと背を押されて前につんのめった。なんだよ?と思う間もなく──
ヤイヅと男友だちはいきなり後ろから突き飛ばされた。というより人が一斉にぶつかってきた。え、なに?と思う間もなく──、
女のきゃあっという悲鳴。
◆
ここから先のできごとは、
たった2分──120秒から長くて180秒の間に起きた。
▽続きを読む▽
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