その男、K。#12(終)【秋葉原通り魔事件】

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セカイのかけら

秋葉原で一気に凝縮されたの世界は、加藤智大が逮捕された瞬間、粉々に飛び散った。
もはや見えるのは切れ切れのかけら。できるだけ拾い集めて──

親たち

東京──
病院に駆けつけたタカの親父は、息子の遺体と対面して叫んだ。
「バカ野郎!なぜ死んだ!」


青森──
夜7時。加藤智大の実家にマスコミが群がる。
すでに離婚、家に住んでるのは父親だけだったが、両親そろって玄関前で頭を下げた。
母親は腰が抜けて立てず、這いつくばって屋内に消えた。

鎮魂歌

事件から数日後──
  
死者7人の葬儀があった。

なかでも異彩を放ったのが彼女の通夜、告別式。

会場は、寛永寺輪王殿
雨の中、参列者は3時間の列

そして宗教色を排した音楽葬
  
先輩@彼氏や親しかった5人の藝大生の演奏、「ヘイ・ジュード」「G線上のアリア」、彼女の好きな曲で弔った。
  
社葬や著名人の葬儀場格の輪王殿東京藝大の学長臨席、日比谷高校の校長も参列、三笠宮崇仁親王(客員名誉教授だからだが)の弔電、政府関連や大企業からも弔電(父親といとこおじラインで)、
21歳の一女子大生には破格の大葬になった。
   
マスコミは“視聴者ウケ”する彼女の悲劇ばかり追った。もちろん音楽葬も。
  
これがあるニッチな集団を刺激した。
  
加藤智大」「格差社会英雄」「加藤の」「勝ち組に一矢報いた」「我々のスケープゴートとなった聖人
  

ネット上の“負け組なおれら”だ。
   
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