【事件激情】県警対14歳 Vol.6【酒鬼薔薇聖斗事件】


   
  以下、この色の人名*は例によってすべて仮名である。

  警察を含む登場人物の会話・思考の多くは創作である。

  ただし、行動の結果や事実関係は公開された記録にもとづく。
  

司法解剖

 
須磨署内の捜査本部。

捜査幹部、捜査1課、所轄のメインどころがずらずら集まり、捜査会議。
  
「まず本日午後3時アンテナ基地局で発見された遺体について」


アンテナ基地局の設備ハウス床下に長径70cm、深さ35cmほどの穴が掘られ、遺体はそこにおさまる形で仰向けに押し込まれて。膝から下は外にはみ出していた。
「高さ約2mのフェンスとパラボラアンテナ、植え込みと雑草でフェンス外からはほとんど見えない状態だったと思われます」
  
「またアンテナ基地局のフェンス扉には45mm南京錠がかかってましたが、

この南京錠が何者かの手ですり替えられていました。
  
いつすり替えられた?


「ケーブルテレビの点検員が4月下旬に来ています。そのとき南京錠は手持ちのマスターキーで問題なく開いたそうです」
 


「ところが遺体発見の1時間半前、午後1時30分頃、新人研修の職員が来たとき、カギが合わず開かなかったそうです。このときはもう南京錠がすり替えられていたと思われます」

「南京錠すり替えは殺害犯が行った可能性が高い。メーカー、販売店を当たれ」

ただし、2500番の45mm南京錠はありふれすぎる量産品でホームセンターでも買える。当たれと言われても気が遠くなりそげな。

このへん刑事ドラマとちがってインスト曲とともに15秒で流される地味きわまるシーンがじつは大半占めるんである。


遺体は神戸大学医学部法医学教室に移されて、龍野嘉紹教授司法解剖

少年の首は切断されただけでなく──

  
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その後も新たな事件が加わっています。
 
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【事件激情】県警対14歳 Vol.5【酒鬼薔薇聖斗事件】

  
  以下、この色の人名*は例によってすべて仮名である。
  警察を含む登場人物の会話・思考の多くは創作である。
  ただし、行動の結果や事実関係は公開された記録にもとづく。

  

規制線が張り巡らされる。
校門前は封鎖。
  

朝っぱらの主要道なんで猛烈な交通渋滞である。
  
緊急招集=教員全員すぐ学校来い
連絡網で全校生徒730人は自宅待機、学校来んな。
  

それも知らずに登校(ケータイまだみんな持ってないからね)してきた生徒は、教員が待ち受けてスグ帰れとにかく帰れでワケワカのまま即下校。
  
生活指導部の正岡*先生も招集で学校に駆けつけ。
何が起きたか知らされた。
「…まさか」


すぐある一人の顔を思い浮かべた。
  
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県警対14歳 Vol.4【酒鬼薔薇聖斗事件】

以下、この色の人名*はすべて仮名である。
警察を含む登場人物の会話・思考の多くは創作である。
ただし、事件に関わる行動事実関係は公開された記録にもとづく。
  

「誰か帰ってきとるん?」

琴絵*が浴室を覗くと、
  

誰もおらん。
  
蛇口の締めがゆるくて水が滴って反響してた、というオチ。
なんやまぎらわし。

あら、これ庭にあったたらいやないの。
誰が持ち込んだのいややわー。
  
ちょうど階段からパジャマ姿のシゲル*が降りてくるところ。

「あら、シゲ*、なんやあんたずっと寝とったんかいな」
  

くんな、まだ見つからへんで」
「ふうん」
相変わらず興味なさそうな長男である。
「ところで、あんた、今日風呂入ったん?」
  

「……なんで」
   
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県警対14歳 Vol.3【酒鬼薔薇聖斗事件】

以下、この色の人名*はすべて仮名である。
警察を含む登場人物の会話・思考の多くは創作である。
ただし、事件に関わる行動事実関係は公開された記録にもとづく。
  

  
1997年 5月25日

日曜日
  
──2日目 午後
  
酒鬼薔薇聖斗

タンク山の行き慣れた獣道をずんずん行く。捜索隊とは反対の北須磨高校の方へと。
  

タンク山というのは小さな丘に見えて目印になるものが何もなくただただ無秩序に木々が生い茂ってるばかり。タンク付近のほかは獣道くらいしかないんで、大人でも迷ってしまいそうだ。
でも酒鬼薔薇にとっては自分の庭のようなもの。何人で来ようと捕まるものか。
  
さっき警察犬が吠えてたな。
あれを嗅ぎつけたのか。犬はやっぱり鼻がええんや。
なのに人間の警官は気づかず帰ってしまった。あいつら犬より頭悪いんや。
  

ふとサスケを思い出す。


ばあちゃんの犬。
  
ばあちゃんサスケ

もういないけど。

  
さっき糸ノコを使ったとき、指に伝わってきた感触も思い出す。

昨日
よりずっとよかった。
あのときはやるべきことをやるのに精一杯で、せっかくの感覚をゆっくり味わう間もなかったから。

今日の方がずっと満足感というか素晴らしい気分を味わえた。

 
ちなみに酒鬼薔薇はずっと「糸ノコ」と最後の最後まで間違えてるんだが、実際は「金ノコ」なんである。
でないと、南京錠を切れないわけだし。
  

でも失敗したのは、口の中にまだ残る味。 
…鉄臭っさ。
金属なめたようや。
いい考えと思ったんやけど。やめときゃよかった。正直うがいしたい。
  

手にはずっしり重くなった黒いビニール袋。
ふうん、意外と重いんやな。
  
さて、これ、どないしよか。硬くなっとったから記念品もとれへんかったし、といってこのまま家に持ち帰っても置くとこないしな。
もう一度じっくり眺めてみたいのもあるし。

うん、やっぱりあそこや。あそこなら人も来ない。

そうと決まれば急げや。酒鬼薔薇黒ビニール袋を手に生い茂る葉をかき分けながら市道へと下りていく。


もちろん友が丘一帯はくん捜索の真っ最中で、大勢の人々が行ったり来たりしてる。

ちょうどタンク山南側の市道も、

 
多井畑小学校女教師が歩いていた。
   
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県警対14歳 Vol.2【酒鬼薔薇聖斗事件】


  
現実の魔物は、
本当に普通な“彼”の兄弟や両親たち以上に普通に見えるし、
実際、そのように振る舞う。
──“少年A”による「懲役13年」より
  
  

 
1997年 5月24日
土曜日
  
──1日目
  

この日、週末の須磨ニュータウンは、朝から雨が降ったり止んだり天気は不安定である。
  
その夜8時50分
神戸市須磨区を管轄する須磨警察署に、ニュータウン友が丘の住民から捜索願が出された。
  
「11歳の次男が出かけたまま帰ってこない」
  

時間を逆回転してさかのぼると──


午後1時30分から40分頃──
  
いなくなったのは、友が丘に住む土師淳@11歳
多井畑小学校6年生。
  
家族そろって昼食のあと、

「じいちゃんとこ行ってくるわ」
一人で家を出た。
  
母親は出かけに声をかけた。

「ジャンパー着て行きなさい」
  

“じいちゃんとこ”までは市道を東へ500mほど。ご近所さん的距離だから、はふらりとよく遊びに行くのだった。
  
学校では“なかよし学級”にはやや知的発達障害がある。
でも生活に支障があるってほどじゃなく、

いつもニコニコ丸い笑顔を振りまく一方で、知らないおじさんどころか知ってる大人にさえ近づかない用心深い子で、必ず暗くなる夕方5時には帰ってくる子だった。
  
少し前に、北隣の学区で通り魔が出て、

女の子大けがをしたか死んでしまったかした事件があって集団登下校も続いていたからなんだか最近物騒で怖いわねだったけれど、
まあじいちゃんの家なら近くだし、表通りだし、家族もそんなに心配してなかった。
  
ところが、


5時半を過ぎても、
  
少年は帰らない。
  
珍しいわね、どうしたのかな。

母親じいちゃん祖父の家に電話してみた。
  
  
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県警対14歳 Vol.1【酒鬼薔薇聖斗事件】

   とつぜんだが、その『ミゾ』の中には、
 いったいどれくらいの生物が住んでいるね?
    ──“少年A”作 漫画「ナメンじゃあない」
  
 
1995年
 
1月17日
  

兵庫県神戸市
  

午前5時46分
  

──52秒
  

  
 

  
マグニチュード7.3震度7
  

   
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乙女の祈り。*後篇【宝塚中3女子自宅放火事件】


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乙女と犯行予告

さて、ポー子ジュリ江2人ワールドっぷり、例のゴスロリカップルにも似てなくもない。
が、桃寿彼氏がいびつでも一応は恋愛だったのにくらべてこっちはずっと幼い
  

同性愛かというとそれ以前。2人は子ども脳のままだった。
  
こういう計画って秘密厳守なのが原則だと思うんだが、
  

宝塚乙女2人はもう初めっから計画を学校でぺらぺらしゃべってる。
  
「親を殺す」「うざいから」「家に火つける」「鑑別所に行く」
  

だから2人の犯行計画なんて細かいとこまでみんなずっと前から知ってたんである。
が、
2人が親ウザい親ウザいっていつもいつも言い合ってるのは周りの生徒はみんな知ってたから、ストレートすぎる犯行予告を聞いても誰も本気にしなかった。
あーまたこいつら言ってら、ってとこだろう。

何度か決行しようとした。が、

「夜中起きれへんかった」
  
やる気あんのか乙女たち。

このとき、1週間くらい前までは本気半分口だけ半分だったんだろうけど──。
  
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